味噌作りにおける大豆の話

2021.2.17
大豆は味噌の主要な原材料の一つです。
星野本店の味噌作りにおける、大豆への思いについてのお話です。

大豆の特性ー中国産


 大豆の中にも、「味噌作り」に適したもの、そうでないものがあります。では、どんな大豆が味噌作りに適しているのでしょうか?


 それには、大豆中の炭水化物含量が豊富、カルシウム含量が少ない、種皮が薄く黄白色であること等々、多くの要素が関わっています(*1)。そして、特に中国産の大豆は、美味しい味噌になる成分として重要な遊離型全糖、ショ糖が多く含まれていることが知られており、国産大豆よりも上記成分が豊富であると報告されています(*2)。これらのことから、古くから中国産大豆は味噌作りに適したものとして、考えられています。


 ではなぜ、中国産大豆にはそのような性質が備わっているのでしょうか?諸説ありますが、大豆の主要な栽培地である吉林省、黒龍江省、遼寧省を含む東北地方の気候条件・土壌条件が大豆の生育に適しているため(*3)と考えられています。



大豆に対する私達の思い


 星野本店では様々な大豆を使って製造試験を重ねて、今の原材料の選択にたどり着きました。上記のように中国産大豆には味噌作りに有利な点があるとは申し上げつつも、我々の選択基準は、単に〇〇産か?というラベル・スペックで判断するのではなく、安全性は大原則としつつも、あくまでもシンプルに味がどうなのか、「味噌にしたときに再現性良く、美味しくできるのか?」ということを大切にしています。


 国産・米国産・カナダ産など数々の原材料を比較検討しながら試作品を作る中で、当時私達が最も安定して美味しいと思う味噌を作ることができたのが、偶然にも中国産大豆だったというわけです。そして、有り難いことに何十年、何世代にも渡り、長らくご支持いただくお客様がいらっしゃることが、何よりの証であり、私達の自信になっていると考えております。


 食の安全性についても、信頼できる穀物商社を通じて、大切に栽培され、各種試験によって選び抜かれた大豆を仕入れています。中国産だからと扉を閉ざしてしまうのでなく、どのような成り立ちで歩んできたものなのかを見ていただけますと幸いです。もしかしたら、この先、良い豆との新たな出会いもあるかもしれません。その出会いも大切にできるよう、伝統を守りつつも、柔らかな心・姿勢で万事臨んでいきたいと考えています。

 どうぞ、星野本店のお味噌をお楽しみください。

参考文献:

 *1 今井ら, 味噌技術読本, 1990

 *2 平ら,日本醸造協会誌, 1997

 *3 長澤ら, 農業経営研究, 2004

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